1章 少子化がもたらすヤバい事実【③少子化対策の手遅れの代償】

子育て

 政府も今まで対策を何もやってこなかったわけではないですが、出生数が80万人を切っているという時点で、効果があったとは言えないですね。

 平成に入り、待機児童の改善や女性の社会進出、男性のイクメン化など、子育て世代を支援するような施策は色々ありましたが、どれも少子化対策としてはパッとしていない印象です。

初めて人口が1億人を突破した1967年の時点で、政府は日本の人口は1億2500万人弱で頭打ちし、人口減少に転じると予想していたのにこの状況なのです。

 そして、日本の人口が減少に転じて約14年経って、今更ながら岸田内閣は異次元の少子化対策をやろうとしているのです。逆に恥ずかしくないのだろうかと思ってしまいます。

 少子化対策が手遅れになってしまった代償は大きすぎたと言えます。単に子どもの数が減っているだけでなく、少子化対策に貢献している子育て中のパパやママに関する問題が増えているからです。

その問題を夫婦間、女性、男性の観点でまとめてみます。

幸せになれない夫婦

 数字を知って驚いたのですが、結婚する夫婦は年間約60万組いる一方で、年間約20万組の夫婦が離婚しています(図1−4)。なんとだいたい3組に1組の夫婦が離婚していることになります。

図1−4 婚姻と離婚の件数の推移

出典:内閣府 男女共同参画局 男女共同参画白書 令和4年版

ちょっと前に流行った熟年離婚も含まれてはいますが、とりわけ出産後に夫婦関係が悪化し離婚する「産後クライシス」が増えています。出産直後の子どもが0〜2歳の時に離婚するケースが多いことからもわかります(図1−5)。

図1−5 母子世帯になった時の末子の年齢階級別状況

子どもを産み苦しむママ

 ママの10〜15%が産後うつを発症しているようです。さらに、国立生育医療研究センターの調査によると、妊娠中や産後1年未満に死亡した妊産婦357例のうち死因のトップが「自殺」(102例)うち92例が産後1年未満だったという悲しい事実があります(図1−6)。

図1−6 産後1年未満に自殺した母親の数

これは、子育てによる育児不安や睡眠不足、パートナーのサポート不足が原因と指摘されています。実際に、ワンオペ育児をしましたが、我が子がかわいいと思う一方で、自分で大丈夫だろうかという不安や社会から取り残されていくような孤独を感じました。

また、図1−7のように日本人男性の育児時間は女性より圧倒的に少ないですし、世界最低水準です。近頃、自称イクメンが増えてはいるので、家事や育児の時間が増えているのかと思っていましたが、世界と比べるとまだまだできていないようです。

図1−7 6歳未満の子供を持つ夫婦の家事・育児関連時間の推移(1日当たり)

出典:内閣府 令和4年版 少子化社会対策白書

また、経済協力開発機構(OECD)の2021年の調査では、日本人の平均睡眠時間は7時間22分と33カ国中で最短だった。ただでさえ睡眠時間が短い日本において、男性よりも女性の睡眠が13分短く、この傾向があったのは日本を含む6カ国だけです。

さらに、厚生労働省が2022年に公表したデータ(令和3年度 健康実態調査結果の報告)によると、睡眠時間が7時間以下の人は男性63.2%、女性71.7%で、女性の方が睡眠不足であることもわかっておりかなり深刻です。

この結果だけを見ると、パパは家事・育児もしていないのにママよりも寝ているということになっており、イクメンが増えたのは幻想だったのでしょうか。

パパも苦しんでいる

実は、家事・育児をしなさすぎと言われているパパも産後うつが増えているのです。イギリスの研究によると、10〜11人に1人が発症するリスクがあるとされています。

昨今は、パパも仕事をしながらでも家事・育児をやって当たり前(イクメンたるべき)とも言われ、プレッシャーを感じて限界が来てしまっているためでしょう。まして日本では「子どもができたからもっと働かないとね」と周りから言われた経験がある方も多いと思いますが、パパは働くべきという感覚がまだまだ強いです。

実際、日本人の男性は、極端に有償労働時間が長く、諸外国と比べても歴然です(図1−8)。そんな中でも、日本のパパは何も努力していないわけではなく、少しずつですが家事・育児の時間が増えており、やはりイクメンは増えていたのです(図1−9)。

しかし、このままイクメンを増やしていくというやり方は、私はちょっと違うように感じています。

図1−8 男女別に見た生活時間の国際比較(週全体平均、1日あたり)

出典:内閣府 男女共同参画局 男女共同参画白書 令和4年版

図1−9 夫婦の家事関連時間の推移(週全体平均、6歳未満の子どもを持つ夫婦と子どもの世帯)

出典:総務省 統計局 令和3年社会生活基本調査

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