【第9話】表参道の経営者妻。「重いベビーカーは悪」という常識を、私のローズゴールドが論破する。

【STORY】ベビーカー小説

第1章:10キログラムの「見栄」

南青山、根津美術館の通り。 ここを歩くことは、私にとって一種の「儀式」だ。 夫は経営者で、家計には余裕がある。でも、平日は朝から晩まで仕事で不在。 広いマンションで赤ちゃんと二人きり。社会から切り離されたような孤独感を埋めてくれるのは、この街の華やかな空気と、私の手元にある**「Cybex Mios(ミオス)」**だけだった。

「やっぱり素敵ですね、ローズゴールド」 ブティックの店員にお世辞を言われるたび、私の自尊心は満たされる。 このフレームの輝きは、私の「格」を証明する王冠だ。 そのためになら、10.2kgという重量も我慢できる……はずだった。

しかし、現実は甘くない。 タクシーに乗る時、運転手さんが不慣れだと自分でトランクに持ち上げなければならない。 その度に、二の腕に食い込むズシリとした鉄塊の重み。 「よい……しょっ!」 優雅な白鳥が水面下で足をバタつかせるように、私は涼しい顔の下で、歯を食いしばってこの「見栄」を運搬していた。

第2章:軽いベビーカーへの「浮気心」

「紗世さん、まだそんな重いの使ってるの?」 ママ友とのランチ会。 彼女が押してきたのは、最近流行りの国産軽量オート4輪だった。 「これ見てよ、5kg切ってるの。片手でヒョイだよ。ミオスの半分じゃん」 彼女は私の目の前で、赤ちゃんを抱っこしたまま、手品のようにベビーカーを折り畳んで見せた。

心が揺らいだ。 (いいな……楽そうだな) 私のミオスは、畳むのにも一苦労だ。 最近は腰も痛い。腱鞘炎も治らない。 「見栄なんて張らずに、楽な方に逃げればいいじゃん」 悪魔がささやく。 10万円もしたけど、メルカリで売ればそれなりの値段になる。 この重い「十字架」を下ろして、私も楽な「軽量族」になろうか。 本気でそう考え始めていた。

第3章:カフェで起きた「悲劇」

事件は、デザートが運ばれてきた時に起きた。 表参道の狭いカフェ。 ママ友は、自分の軽量ベビーカーのハンドルに、パンパンに詰まったマザーズバッグと、買い物した紙袋をS字フックで吊るしていた。

「あ、ちょっとグズったから抱っこするね」 彼女がベビーカーから赤ちゃんを抱き上げた、その瞬間だ。

ガシャーン!!

店内に大きな音が響き渡った。 赤ちゃんという「重り」がなくなったことでバランスが崩れ、荷物の重さに耐えきれず、ベビーカーが後ろ向きに派手にひっくり返ったのだ。 カフェラテが床に飛び散り、店内が静まり返る。 「うそ、やだ……ごめんなさい!」 彼女は真っ赤になって、ひっくり返ったベビーカーを起こそうとするが、荷物が重くて起き上がらない。 惨めだった。見ていられなかった。

第4章:動かざること山の如し

私はハッとして、自分のミオスを見た。 私のハンドルにも、同じくらい重いマザーズバッグと、伊勢丹の紙袋がかかっている。 そして今、息子は私の膝の上にいる。

でも、ミオスは微動だにしていなかった。 まるで床に根が生えたかのように、どっしりと構えている。 倒れる気配など微塵もない。

(そうか……!) 私は雷に打たれたように理解した。 この「重さ」は、ただの鉄の塊じゃなかった。 「低重心」という機能だったのだ。 ミオスはフレームの下の方に重量が集まっている。そして、剛性の高いフレームがしっかりと重心を支えている。 だから、多少荷物をかけようが、子供が暴れようが、ビクともしない。

軽いベビーカーは、持ち運びには便利だ。 だが、一度手を離せば、風船のように頼りない存在になる。 対してミオスは、**「アンカー(碇)」**なのだ。 この不安定なワンオペ育児の中で、唯一、絶対に倒れない柱として、私と荷物を支えてくれていたのだ。

第5章:機能美という名の「とどめ」

騒動が落ち着いた後、ママ友はバツが悪そうに言った。 「やっぱり、高いやつは違うね……なんか、安定感が全然違う」

私は心の中でガッツポーズをした。 (勝った) 見栄で買ったと思っていたものが、機能で勝った瞬間だった。

さらに、私は気づいてしまった。 ミオスの**「リクライニング」の凄さに。 ママ友のベビーカーは、紐(ストラップ)で背もたれを調整するタイプで、倒すときに「ガックン」と揺れる。 でもミオスは、レバーひとつで「スーッ」**と滑らかに倒れる。 その機械的な精度の高さ。 だから、寝付いた息子を起こさずに、フルフラットにできる。

「見て、このメッシュシート。背中も蒸れないのよ」 私は追撃の手を緩めない。 「フレームが硬いから、段差でもハンドルが取られないし」 今まで「重い」と呪っていた要素が、すべて「子供を守るための装甲」に見えてきた。 10kgの重量は、**「愛の重さ」であり、「安全へのマージン」**だったのだ。

第6章:重くて、美しくて、倒れない

店を出て、表参道の交差点を渡る。 夕日が、ローズゴールドのフレームを照らし、ギラリと輝く。

「よい……しょっ!」 歩道の段差。やっぱり重い。 でも、その重さが愛おしい。 ハンドルから伝わる「ガチッ」とした剛性が、私の掌に勇気をくれる。

「重いベビーカーは悪」? 笑わせないで。 軽さを求めて安定を捨てるなんて、私にはできない。 私はこの「重くて美しい相棒」と共に生きていく。 孤独なワンオペの日々も、カフェでの視線も、このローズゴールドの輝きと、絶対的な安定感があれば、優雅に乗り越えられる。

ショーウィンドウに映る私は、もう迷っていなかった。 そこには、南青山の街にふさわしい、堂々たる「母親」の姿があった。


【本日の生存戦略物資】

Cybex(サイベックス) Mios(ミオス) ※推奨:ローズゴールドフレーム

① 総評(Verdict): 「見栄」で買って、「機能」で惚れ直す。 多くのママが「見た目」で選ぶが、真価はそこではない。10kgという重量が生み出す**「絶対的な転倒耐性」「低重心の安定感」**こそが本質。荷物をハンドルにかけたまま子供を抱き上げても倒れない(※過信は禁物だが)。この安心感は、軽量ベビーカーでは物理的に到達できない領域だ。

② 機能的勝因(Hidden Spec): 「4段階リクライニングの機械的精度」。 多くのベビーカーが採用する「紐式」のリクライニングは調整が面倒で揺れやすいが、ミオスはレバー操作で機械的に動く。この「スーッ」と動く挙動が、敏感な赤ちゃんの睡眠を妨げない。また、背面のメッシュは日本の蒸し暑い夏において最強の空調システムとなる。

③ 所有の美学(Pride): 「所有欲を満たす金属の塊」。 プラスチックの軽さとは対極にある、金属フレームのひんやりとした質感と剛性。ハンドルを握った瞬間に伝わる「いいモノ感」が、毎日の育児のモチベーションを底上げする。ローズゴールドは、もはやママのジュエリーである。



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