【第12話】二子玉川の車好きパパ。「ベビーカー界のベンツ」を買ったら、本物のベンツに載らなかった悲劇。

【STORY】ベビーカー小説

第1章:俺のガレージには「2台のベンツ」がある

二子玉川ライズの駐車場。 俺は愛車のSUV(メルセデス・ベンツ GLCクーペ)のリアゲートを開け、その完璧な眺めに酔いしれていた。 この流麗なクーペスタイル。そして、その横に鎮座するもう一台の愛車。 ドイツ生まれの最高級ベビーカー**「Cybex Priam(プリアム)」**だ。

「お客様、こちらはベビーカー界のベンツと呼ばれています」 店員の一言で即決した。価格はセットで約20万円。 圧倒的な剛性、巨大なホイール、高級感あふれるファブリック。 二子玉川の蔦屋家電を散策するとき、このプリアムを押していると、俺は「成功者」としての全能感に包まれる。 車もベビーカーも、妥協なきドイツのクラフトマンシップで揃える。これぞ男のロマンだ。

第2章:軽井沢への「積載テトリス」

しかし、そのロマンは先月の軽井沢旅行で脆くも崩れ去った。 会社の同僚家族との合同旅行。 「パパたちはゴルフ、ママと子供たちはアウトレット」というプランだ。

出発の朝、俺は冷や汗をかいていた。 ラゲッジルームには、俺のゴルフバッグ。 そして、妻と子供の着替えが詰まったボストンバッグ、お土産用のスペース。 そこに、巨大なプリアムを積み込まなければならない。

「あれ、達也さんの車、もうパンパン?」 同僚の声が刺さる。 彼の車はトヨタのアルファード。 ゴルフバッグ4つにベビーカー、さらにストライダーまで余裕で飲み込んでいる。 「……いや、計算通りだから」 俺は強がったが、現実は**「テトリス失敗」**だった。 プリアムは畳んでもデカい。特にあの立派な後輪が邪魔をして、トランクが閉まらないのだ。

第3章:後部座席の「絶叫」

「……ごめん、これ後ろに置くわ」 結局、チャイルドシートに座る娘の足元に、無理やりプリアムのフレームを押し込んだ。 タイヤは泥除けカバーに入れたが、圧迫感が半端ない。

「ギャアアアア!!」 娘が火がついたように泣き出した。 当然だ。目の前に巨大な金属の塊があるのだから、怖くて狭くて仕方ないだろう。 「もう、なんでこんなデカいの買ったのよ!」と怒鳴る妻。 娘の泣き声と妻の怒号。 俺の愛車は、優雅なクーペから、荷物満載で阿鼻叫喚の**「夜逃げトラック」**に成り下がっていた。

「間違っていた……」 プリアムは素晴らしい。だが、それはアルファードのような「動くリビング」を持つ家のためのものだ。 俺のような車好きパパにとって、積載スペースを圧迫するベビーカーは、家族の笑顔と俺のドライビングプレジャーを奪う**「積荷」**でしかなかった。

第4章:オランダからの「隙間産業」

旅行から戻り、俺は即座にリサーチを開始した。 必要なのは、プリアムのような「ステータス」と「新生児からの快適性(AB型)」を持ちつつ、トランクの隙間に入る「コンパクトカー」だ。 リベルのような簡易B型も考えたが、まだ腰が据わっていない娘には早いし、車好きとしてあの「プラスチック感」は許せない。

そこに見つけたのが、オランダのブランド**「Joolz(ジュールズ)」**の最新モデルだった。 代官山の直営店で、実物(Aer 2)を見る。 開いた姿は安っぽさが微塵もない。シートは広く、ハンドルもレザー調で上質だ。

「これ、最新モデルから生後1ヶ月から使えるAB型になったんですよ」 店員さんがリクライニングを倒すと、ほぼフラットになった。これなら娘も快適に寝られる。 「じゃあ、畳んでみますね」 ボタンを押すと、パタン、と三つ折りに畳まれた。 その薄さに、俺は目を疑った。 厚さ、わずか21.5cm。 「これだ……」 俺は脳内で、愛車のトランクの「あの隙間」をシミュレーションした。

第5章:コンペ前夜の「快感」

そして今日。土曜日の昼下がり。 明日は会社のゴルフコンペがあるため、俺の車のトランクには、すでにゴルフバッグが鎮座している。 「ねえ、ちょっと二子玉まで買い物行かない?」と妻。 以前なら「ごめん、バッグ積んじゃったからベビーカー乗らないわ」と断っていただろう。

だが、今の俺には**Joolz Aer 2(ジュールズ エアー 2)がある。 俺は余裕の表情で、ゴルフバッグとサイドポケットの間の、わずかな「デッドスペース」**にAer 2を滑り込ませた。

「スポッ」 完璧だ。 シンデレラフィット。 トノカバーも問題なく閉まる。後部座席も広々としていて、娘もご機嫌だ。 「へぇ、パパやるじゃん。これなら邪魔にならないね」 妻の機嫌も上々。 俺たちはスマートに車を走らせた。

第6章:スマートな男の「最適解」

二子玉川ライズの広場。 俺はAer 2を片手で畳み、ショルダーストラップで肩にかけ、スタバの列に並んでいた。 6kg台という軽さは、ゴルフバッグより遥かに軽い。

駐車場に戻り、愛車のトランクの「定位置」にAer 2を放り込む。 俺のカーライフは、こいつのおかげで完全なバランスを取り戻した。

大きいことはいいことだ。 だが、**「自分の車に合ったサイズ」**を選ぶことは、もっと知的なことだ。 俺は満足げにエンジンのスタートボタンを押し、明日のコンペに向けてハンドルを握りしめた。


【本日の生存戦略物資】

Joolz(ジュールズ) Aer 2(エアー 2)

① 総評(Verdict): SUVやセダンに乗る、車好きパパのための「積載量解決ソリューション」。 最大の特徴は、このコンパクトさで**「生後1ヶ月から使えるAB型」**であること。よくあるB型バギーとは一線を画す「高級感」と「快適性(フラットリクライニング)」を持ちながら、折りたたんだ時の薄さは圧倒的。ゴルフバッグを積んだ状態のトランクの隙間にも驚くほど収まりが良い。

② 機能的勝因(Hidden Spec): 「AB型に進化したリクライニング性能」。 旧モデル(Aer+)からの最大の進化点。ほぼフラットまで倒れるため、首すわり前の赤ちゃんでも安心して乗せられる。それでいて畳めば驚異の薄さ(21.5cm)。フレームの剛性も高く、片手での操作性が抜群に良い。

③ 所有の美学(Pride): 「オランダの人間工学」。 Joolzは「人間工学(エルゴノミクス)」を重視するブランド。ただ小さいだけでなく、押す人の姿勢や子供の座り心地まで計算されている。日本ではまだバガブーやサイベックスほど溢れていないため、「知る人ぞ知る名車」に乗っている優越感がある。



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