第1章:その「おもてなし」はコストである
亀戸クロック(カメクロ)。 再開発でできたこのモールは、週末の我が家の「視察現場」だ。 妻のお腹には第一子。今日は、我が家のバランスシート(B/S)に新たに計上される「固定資産(ベビーカー)」の選定日だ。
「わあ、これすごい! ベルトが磁石でピタッてくっつくよ!」 妻がアカチャンホンポで歓声を上げる。 日本のトップメーカーの最新モデル。 マグネット式のバックル、ふわふわのクッション、持ちやすいグリップ。 確かに「UX(ユーザー体験)」は素晴らしい。まるで至れり尽くせりの日本旅館だ。 だが、財務畑の俺の脳内電卓は、冷静にその構造を分解していた。
(この過剰な親切機能は、製造原価を押し上げているだけではないか?) 価格は約6万5千円。 決して安くない。この「快適さ」は、果たして数年後の「資産価値」に残るのか? それとも一過性の「消耗費」なのか?
第2章:財務担当の「監査」
「ちょっと待って。耐久テスト(監査)をさせてくれ」 俺は展示車をテストコースへ持ち出した。 見た目の豪華さよりも、俺が見たいのは「躯体(フレーム)」の強さだ。
ちょっとした段差に前輪を押し当てる。 ハンドルに力を込めた瞬間、プラスチックのフレームが「グニャリ」としなった。 **「あそび」だ。 振動吸収のための構造だとは思うが、俺にはそれが「構造上の脆弱性」に見えた。 力が逃げている。 今はいい。だが、子供が重くなり、毎日酷使した3年後、この接合部は悲鳴を上げているだろう。 それはつまり、「耐用年数が短い(=減価償却が早い)」**ことを意味する。
(却下だ。これは長期的には『高くつく』買い物になる) 俺は心の中で、稟議書に「否認」のハンコを押した。
第3章:カーボンという「優良資産」
「お客様、それならこちらと比較されますか?」 店員さんが持ってきたのは、街で溢れかえるほど見るアレだ。 「Cybex Melio Carbon(メリオ カーボン)」。 正直、第一印象は「量産型」だ。みんなと同じものを買うのは、思考停止した投資家のようで気が進まない。
「こちら、フレームがカーボンなんです」 その単語で、俺の目の色が変わった。 カーボン(炭素繊維)。 軽くて、腐食せず、経年劣化に極めて強い産業資材。 プラスチックが「消耗品」なら、カーボンは**「恒久資産」**になり得る素材だ。
ハンドルを握り、左右に振ってみる。 さっきの国産車にあった、頼りない「ねじれ」がない。 あるのは、テニスラケットのような強靭な**「しなり」と「反発」**だ。 俺が入力した力が、ロスなくタイヤへ伝達される。 (なるほど……これは『運用コスト(労力)』も低そうだ) 初期投資は高くても、ランニングコスト(親の疲れ)とメンテナンスリスクが低い。 これは、非常に優秀な投資案件の匂いがする。
第4章:財務部課長のプレゼン
「でもパパ、これ7万3千円もするよ? さっきのより高いし、被るよ?」 妻が渋る。当然だ。彼女はPL(損益計算書)の「今の出費」を見ている。 だが俺はB/S(貸借対照表)の「資産価値」を見ている。 ここからが財務マンの腕の見せ所だ。
「いいか、聞いてくれ。モノの値段は『イニシャルコスト』だけで見るな。**『出口戦略(リセールバリュー)』**まで計算して初めて、本当のコストが出る」
俺はスマホでメルカリの相場画面(エビデンス)を提示した。 国産ベビーカーの中古相場は、モデルチェンジが早く値崩れが激しい。 状態が良くても1.5万〜2万円程度。これは買った瞬間に価値が消える「消費」だ。 対して、メリオカーボンは? 使い古されたモデルでも3万円〜4万円で取引されている。
「なぜこんなに高く売れると思う? それは**『iPhone』と同じ理屈だ」 俺は畳み掛ける。 「みんなが使っているから、欲しい人が常にいる。つまり『市場の流動性』が極めて高い**んだ」 「『被る』んじゃない。それだけ強固なマーケットが確立されている証拠だ。安心して買えて、売りたい時にすぐ高く売れる。マジョリティ(多数派)に属する安心感と、資産価値という実利を両取りできる。これ以上の優良資産はない」
そして、最後に電卓を見せる。 【国産プラン 実質コスト】 6.5万 – 1.5万 = 5.0万円 【メリオプラン 実質コスト】 7.3万 – 3.5万 = 3.8万円
「わかるか? 7万払うほうが、結果的に1万2千円もキャッシュフローが良くなるんだ。これを承認しない理由は、財務的にありえない」
第5章:亀戸の路地裏で勝つ
「……もう、パパのそういうお金の話、たまに役に立つよね」 妻は呆れつつも、数字のロジックと「iPhoneの例え」に納得してくれた。稟議は承認された。
数ヶ月後。 俺たちはメリオを押して、亀戸天神の参道を歩いていた。 下町の凸凹道。 だが、メリオのカーボンフレームは、それらを**「いなす」**ように進んでいく。 段差の前で、ハンドルを軽く押し下げる。 力が逃げずに前輪が「スッ」と持ち上がる。 この操作感。意図した通りに道具が動くというのは、これほどストレスがないものか。 毎日の「押す」というオペレーションコストが最小限に抑えられている。
妻も最初は「ベルトが磁石じゃない」と文句を言っていたが、今では 「荷物がめっちゃ入るし、軽いからバスに乗るのも楽」 とご満悦だ。 結局、小手先の機能よりも、**「基本性能への投資」**こそが、最大の配当を生むのだ。
第6章:量産型ではなく「賢明な投資家」
カメクロの広場ですれ違う、他のメリオユーザーたち。 以前の俺なら「あーあ、被ってるよ」と冷ややかな目で見ていただろう。
だが今は違う。彼らは同志だ。 彼らを見るたび、俺は心の中で小さく頷く。 (アンタも選んだんだな。この**「最もROI(投資対効果)が高いポートフォリオ」**を)
彼らがファッションで選んだのかは知らない。 だが、俺は**「財務諸表」**に基づいてこれを選んだ。 その論理的な裏付けがある限り、俺のメリオは単なる流行り物ではない。 俺の賢明な投資判断を証明する、黒光りする優良資産なのだ。
【本日の生存戦略物資】
Cybex(サイベックス) Melio Carbon(メリオ カーボン)
① 総評(Verdict): ベビーカー界の「iPhone」。みんなが買っているのには、感情論ではない「財務的な理由」がある。圧倒的な軽さ、走行性、そして驚異的なリセールバリュー。これを買っておけば、まず資産価値として負けることはない、鉄板の投資先。
② 機能的勝因(Hidden Spec): 「カーボンフレームの資産性」。 ただ硬いだけではない。カーボン特有の「しなり」が路面の微振動を吸収しつつ、親が押す力は逃さずタイヤに伝える。プラスチックのような経年劣化(疲労)が少なく、数年使っても「価値」が落ちにくい。
③ 所有の美学(Pride): 「被る」のではない。「市場の流動性が高い」のだ。 iPhoneと同じで、売りたい時にすぐ高く売れる。マジョリティ(多数派)に属することの安心感と、資産価値という実利を両取りできる、財務視点で最も賢い選択。


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